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症例詳細

No.155  視野の障害と運転

23歳の娘です。父親は55歳なのですが、目の病気のため自動車の運転をやめるように指導されました。緑内障のために視野が狭くなっているということででした。私は、ペーパードライバーなので、父親が運転できないとなると、家族一同とても困ります。

また、父は寡黙な方なので、眼科医にあらがうような発言はしていないようです。父は昔のように激しい運動こそしませんが、傍で見ていると普通に歩けていますし、生活には何ら支障がないように見えます。 どうして運転をやめないといけないのでしょうか?

視野というのは、見える広がりや範囲のことを指します。ヒトの眼は、両眼とも健康な状態であれば、正面を見ていても、上側は水平から60度くらい、外側は、90度から100度(つまり真横よりわずかに後ろ)まで、下方は70度くらいまで、物体が動いたことがわかります。とても大きな視野が広がっています。後ろ側は振り向かないと見えませんが、前側であれば極端に上や下の方でなければすべて見える状態と言っても過言ではありません。

視野障害というのは、いろいろな形があります。緑内障のように視野の中に不規則に見えにくい領域が広がっていくもの、脳出血や脳腫瘍などで、両目とも同じような位置関係の所が半分もしくは4分の1など見えにくくなる同名半盲と呼ばれる障害、網膜色素変性症という病気などで見られる輪状暗点や中心性視野狭窄、視神経疾患で見られる中心暗点など、いろいろな視野の異常があります。

このうち中心暗点や末期の緑内障で中心の視野が障害されているということでなければ、かなりの視野障害があっても中心視力は保たれることが多いです。つまり、重度の視野障害があっても見ている中心は少しも問題なく良く見えるため、多くの視野障害は自覚できません。お父様はおそらく、中心視野は全く問題がないが下の方や横側に重度の視野障害があるものと想像されます。こうなると、自動車の前方に横から物体が飛び出してきたときには、気づくまでの時間がとても長くなってしまいます。

時速40㎞だったとしても、1秒で約11m進んでしまいますので、事故を避けることがとても難しくなります。もう一度眼科医の説明をよく聞いて、どの辺りがどれくらい見えないかを教えてもらってください。毎日の生活の中で、運転無は考えられないと思われるかもしれませんが、事故を起こしてからでは手遅れです。眼科医の説明を聞いたうえで、ご家族でよく相談してみてください。