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症例詳細

No.152  重症筋無力症

71歳になる母親のことです。今年になってから右側の瞼が下がっていることが多くなりました。眼瞼下垂という状態のようで、手術で治ると聞いたので近くの眼科を受診しました。

すると、重症筋無力症が疑われるとのことでした。重症筋無力症というのはどんな病気なのでしょうか。手術しても瞼が上がらないということでしょうか。(43歳息子)

重症筋無力症は、神経と筋肉とのつながりに異常が出て、筋肉がうまく働かなくなる病気で難病に指定されています。眼瞼下垂や眼球運動障害による複視(物が二重に見える)が主症状である眼筋型と、全身の骨格筋が障害される全身型があります。全身型の重症例では呼吸筋が障害されることにより生命の危険があります。

日本の調査では、男性より女性のほうが少し多いようで、小児期(5歳未満)にも一つのピークがあり眼筋型が多いようです。それ以降は全身型が多くなり、高齢者になってくるとまた眼筋型が多くなるようです。いずれにしろ、眼症状から始まることが多く、筋肉の働きにくい状況には朝がよくて夕方以降悪化するという特徴があります。使うほどに動かなくなるということで、易疲労性と称され日内変動があるとされますが、良い日と悪い日があるともいわれます(日差変動)。近年はアイスパックテストといって、保冷剤などを瞼に2分間押し当てて、眼瞼下垂が改善されることで診断につなげられることが多いです。

液検査で特定の自己免疫抗体が高値になっていることで確定診断されます。しかし、眼筋型では、半数にこの抗体値が高くない方がいます。神経と筋肉の伝達をよくする注射薬を投与することによって診断することも盛んに行われます。自己抗体が証明されず、診断が難しい場合には、治療薬を試験的に内服させて経過をみることもあります。全身型では、胸腺腫という良性腫瘍が関与するとの考えから、胸腺を摘出することも行われます。総じてこの病気は神経と筋肉との接合部の病気ですから、まずは診断をしっかりさせるべきです。診断が確定したらそこを直す治療が優先されますので、眼瞼下垂の手術を早期に考えるのは得策ではありません。