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症例詳細

No.142  遠近両用メガネ

先日、少しずつ近くが見えにくく感じていて、眼鏡店に行ったところ「老眼」と言われてしまいました。もともと軽い近視だったので、人より老眼でないことを密かに自慢に思っていましたが、近眼だったから少し得していたのですね。

遠近両用メガネを勧められて、試したのですがどうもうまく見えないためとりあえずやめて帰ってきました。もっとよく見えるメガネはないでしょうか?(43歳、女性)

遠近両用メガネにも色々あります。日本で最も普及しているものは累進屈折力レンズと呼ばれ、まっすぐに前を向いて顎を少し引き気味にして遠くが見えます。また、そのまま視線のみを下の方にずらしてメガネレンズの下側を使って手元を見るように設計されています。逆に横方向や斜め下方向にはよく見えないレンズ領域が存在します。

遠用と近用がミックスされたレンズですが、複雑な構造のため近用部のはっきり見える領域がとても狭いレンズです。階段を降りるときにはしっかり顎を引いてレンズの上の方を使って見るようにしないと階段のステップにはピントが合いませんし、掲示板に貼ってある広告の文字を読むときには掲示物に近づいた上で顎を上げて見ようとしない限り文字を読むことが難しいレンズです。長時間読書をしたり、パソコン作業をし続けたりする場合には、あまりお勧めしません。一方、近用のみを重視し、運転などには向いていない代わりに室内では有用であるレンズや、どちらかといえばパソコンと読書など1m以内のものをよく見えるようにした近々レンズと呼ばれるものもあります。

レンズの上半分を全て遠用に下半分を全て近用にしたエグゼクティブと言われる遠近両用メガネがあり、欧米では今も広く普及しています。レンズの上の方を使えば斜め方向も横方向も遠くはよく見えますし、レンズの下側を使えば斜め下側も近くがよく見えます。長時間の近くの作業にもお勧めです。一方でこのエグゼクティブタイプはレンズの中央部分に水平状に見えない領域(境目)が存在し、慣れないとうまく使えません。その他に、レンズ面の大部分を遠用にして下方に小さい丸型の近用部分を入れた小窓タイプと言われる遠近両用メガネもあり、見栄えを気にしなければ使い方によってはとても見やすいメガネになります。

眼科の先生によく相談して、患者さんの使用する状況にあった遠近両用メガネを作られるのが良いと思います。経済的に余裕があるのであれば、1つに限らず、複数の遠近両用メガネを使い分けることもお勧めです。
いずれにしろ、その見えにくさが、屈折異常だけではない場合もありますので、まずは眼科を受診して、しっかり診断してもらってから、適切な眼鏡をおつくりになることが望まれます。