症例詳細
No.102 目薬による近視進行予防法
中学校1年生になる男の子です。近視の進行が早くて、毎年の様にメガネを強くしています。今ではメガネなしでは生活できなくなっています。
近視の進行予防に有効な目薬による治療方法が新しく開発されたと聞きました。以前目薬による治療はやりましたが、全く効果がありませんでした。今回のものは何処が違うのでしょうか。効果があるのでしょうか? (46歳母親)
低濃度アトロピンという目薬による治療方法のことと思います。アトロピンという薬は副交感神経麻痺剤として有名な薬で、点眼剤には1%アトロピンがあります。
この目薬は、強力な調節麻痺作用と散瞳作用があり、正確に屈折状態を把握したい時や、抗炎症作用を期待して使用します。1滴で2週間ほど瞳が広がったりピントが合わなくなったりしますので、よく見える状態でこの目薬を使うと見え難くなります。
以前からこの目薬を使うと近視の進行予防に効果があることがわかっていましたが、これらの副作用のために使用できませんでした。最近、この目薬の低濃度のものを使用して近視の抑制効果があることがわかりました。眼軸長を長くしないつまり眼の前後径を延長させない効果があります。今までの目薬とは全く作用機序が異なり、近視進行を防ぐエビデンスがあります。日本でも多くの医療機関で導入が始まっていて、当院でも処方し始めて10年近くになります。
子供には副作用はほとんどありませんので、安心して使用してください。就寝前に両目に1回1滴さしてください。ただし、近視が治るものではなくて、進行を遅らせるものです。30%は近視進行を防ぎます。現状はマイオピンという商品が正しいものです。クリニックによっては1%のアトロピンを施設内もしくは外部委託して薄めて0.01%アトロピン(無料に近い価格)を処方しているところがあります。これは、濃度にばらつきが出ますので勧められません。当院でも試して学会発表しました。2024年現在、海外から輸入されている商品名マイオピンという点眼剤をお勧めします。通常0.01%溶液を使います。これ以外にもう少し高濃度のものがありますが、少し副作用が起こります。日常生活のこと(No.53)とオルソケラトロジーのこと(No.69)もご参考にしてください。
2024年04月