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症例詳細

No.94  角膜内皮障害

高校生の時からコンタクトレンズを使ってきました。今まではインターネットで購入してきましたが、新発売のコンタクトレンズを購入しようと思い、久し振りに近くの眼科に健診を兼ねて受診しました。

しかし、くろめの内側の細胞がすごく減ってしまっていて、もうコンタクトレンズはしない方が良いと言われてしまいました。今までは特にトラブルもなく、今はめてみてもなんら痛くも痒くも無いのにしてはいけないとはどういうことでしょうか?教えてください。(32歳女性)

“くろめ”つまり角膜は厚さ0.5mm~0.7mmの薄い透明な膜状の組織です。角膜の内側には、角膜を透明に保つために最も大切な役割をする角膜内皮細胞という細胞が一面に張っています。

この角膜内皮細胞は、新生児では1mm2あたりに約4000個あります。この細胞は加齢によって少しずつ減少していきますが、40歳の成人でも1mm2あたり3000個程度はありますし、80歳の高齢者でも2000個程度あるのが普通です。現在の眼科学ではこの細胞が自然に増えることはないとされています。

検査ではある程度の誤差がありますが、年齢とともに次第に数が減っていく細胞です。角膜内皮細胞は、コンタクトレンズを長期につけていたり、白内障などの眼の手術をしたり、怪我をしたりすることで通常より早く減少します。500個/mm2を下回りますと水疱性角膜症という病気となり、角膜が濁って水膨れになり見えなくなってしまいます。視力を回復するには角膜移植が必要となります。

加齢で自然に少しずつは減っていくことを考えますと、60歳~80歳頃に白内障の手術を受ける前には1500個/mm2を下回らないようにしたいところです。30歳前に2000個を下回っていれば要注意と考え、コンタクトレンズの装用が原因であると考えられれば、装用の機会を減らしたり、中止したりする方が無難です。