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症例詳細

No.79  網膜剥離とは?

先日、急に目の前にゴミのようなものが多数見えるようになって眼科を受診したところ、網膜剥離と言われました。すぐにレーザーの手術をしてもらい、一応治ったということです。ただ、ゴミのように見えたもの(飛蚊症というのだそうですね)が、少なくはなったというものの1か月以上たった今もずっと見え続いています。

治療してくれた医師は気にするなというのですが、気になります。一生このままなのでしょうか。どうして手術したのに、飛蚊症がなくならないのでしょうか。教えてください。(54歳男性)

網膜剥離というのは、カメラで例えますとフィルムに相当するところの網膜という組織に穴が開いてそこから眼内の液体(液化した硝子体)が入り込み、眼球壁から剥がれて内側に突出してしまった状態です。剥離した網膜は放置すれば次第に網膜全体に及んでいき、失明していきます。緊急治療が必要な病気で、発症率は10000人に一人程度と言われます。

網膜剥離が小さい場合にはご相談者のように緊急にレーザー治療を施行します。レーザー治療は剥離していない部分の網膜を焼き付けて剥離の進行を抑えるものであり、飛蚊症をなくすものではありません。網膜剥離が大きくなると、レーザー治療で治すことは難しく、入院してメスを入れる手術をすることになります。ご相談者の場合には恐らく裂孔原性網膜剥離といわれるもので、突然の飛蚊症(このQ&A No.4「飛蚊症」参照)を自覚した直後に発生する場合が多いです。

この飛蚊症は、混濁した硝子体であることが多く、引きちぎられた網膜のかけらや裂孔部の出血による場合もあります。いずれにしろこの場合の飛蚊症の多くは、次第に数が減っていきます。ただ、一部の硝子体の混濁は残ることもよくありますから、ずっと見え続けることも起こりえます。指導されているように、気にしないことが大切です。白い壁を見て飛蚊症をわかりやすくしたり、青空を見上げて飛蚊症を探そうとしたりすれば、「ずっと見え続ける」ということになってしまいます

。しかし、ずっと見え続いていても心配ありません。視機能には全く影響がありません。ただ、気にしていなかったにも関わらずに、再度急激に飛蚊症が生じた場合には、また別の部分の網膜剥離が生じていたり、別の病気であったりすることがありますから、すぐに受診することが大切です。網膜剥離には、裂孔原性のもののほかに、滲出性のものや牽引性のものもあります。