症例詳細
No.76 閃輝(性)暗点
17歳の娘のことなのですが、時々、ぴかぴかした光が見えてギザギザのようにだんだん広がって見えるといいます。視界が暗くなって見えにくくなるようなのですが、中に人の顔のようなものが見えることがあるそうです。
その症状は30分ぐらいで収まることが多いのですが、決まって頭痛がしてきて、気持ちが悪いと訴えます。眠ったり、休んでいたりすると数時間で治ります。片頭痛の一種と診断されているのですが、心配です。何が原因なのでしょうか。何か良い治療方法はないのでしょうか。 (50歳母)
閃輝暗点(せんきあんてん)といわれる症状の典型と思います。娘さんが経験しているようなチカチカやピカピカといったような光る点が、歯車のように見え、次第に拡大していきます。これは目をつぶっていても見えるようです。そこに見えにくい暗い部分が出現し、その暗い部分の中には人の顔だったり昆虫だったり、人形の顔のようなものが見えたりする場合があります。
これは、幻視です(実際にあるものが見えているわけではありません)。典型的にはその後に頭痛が出現します。かなり激しい頭痛であったり嘔気が出て嘔吐したりすることがあります。つまり閃輝暗点は片頭痛の前兆としてとらえられています。原因としては脳の血流が低下して起こるといわれていますが、その理由ははっきりしていません。
つまり脳腫瘍などの解剖学的異常をきたす疾患ではありません。もちろん眼の病気でもありません。頭痛の精密検査として、一度はMRIなどの画像診断をしてもらい、脳に明らかな異常のないことを確認しておくことも大切です。特に、頭痛を伴わない閃輝暗点が高齢になって出現した場合には、脳腫瘍や脳動脈瘤などが見つかる場合がまれにあります(この携帯サイト原稿No.26「光視症」参照)。
閃輝暗点の症状が出始めたらすぐに痛み止めを内服することで、その後の頭痛が軽くなることも多いです。症状が頻繁であれば、試してみてはいかがでしょうか。神経内科や眼科を受診して聞いてみてください。
2013年09月