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症例詳細

No.72  ヘモグロビンエイワンシー(HbA1c)

私は糖尿病で数年前から内科に通院しています。内科の先生から糖尿病はよくなっていると言われていましたが、眼科を受診しろと言われて行ってきました。眼科の先生からヘモグロビンエイワンシーはいくつですかと聞かれたのですが、そんなこと知りません。

内科で血糖を測った時には、130と言われて良いとばかり思っていたのですが、眼科では眼底出血があると言われてしまいました。ヘモグロビンエイワンシーって何ですか?糖尿病の治療がうまく行っていると聞いていたのに、眼底出血してしまうなんてあるのでしょうか?(58歳、男性)

人の血液にはヘモグロビンという、赤血球の中のたんぱく質があります。これは全身へ酸素を運ぶものですが、血液中のブドウ糖が増えるとこのヘモグロビンとブドウ糖がくっついてしまいます。これをグリコヘモグロビンと言いますが、グリコヘモグロビンの代表がHbA1c(ヘモグロビンエイワンシー)と呼ばれます。正常値は6.2%以下(2012年より前の日本独自の基準値であるJDS値でいうと5.8%以下)です。

このHbA1cは、1か月から2か月の平均血糖の状態を表していて、糖尿病のよい指標とされます。普通の血糖値は、空腹時には低く、食後に上がるというように食事の影響を受けてしまうのに対して、HbA1cは、食事の影響を受けません。食事の影響を受ける血糖値に一喜一憂するよりも、HbA1cを調べてもらうことにより、1~2か月の血糖管理状況が明らかになります。是非、この値を記憶していただいて、眼科医へ伝えてください。

糖尿病網膜症(糖尿病による眼底出血)の進行は、血糖の管理が悪いほど、言い換えればHbA1cが悪いほどひどくなる傾向があります。ただし、HbA1cが正常、つまり糖尿病が治ったようにお薬でよくなったとしても、網膜症が重症となってしまうことは時に起こります。

網膜症の問題点は、失明するほどひどい状態まで進行しない限り視力低下などの自覚症状があまり出ないことです。ですから、一度糖尿病と診断された場合には、血糖値がほぼ正常になったとしても定期的に眼科への通院も怠らないようにしてください。