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症例詳細

No.67  色覚異常

中学2年生になる娘のことです。小学校の高学年で先天性色覚異常と診断されました。小さい頃は全くわからなかったのですが、小学校高学年になって担任の先生のお勧めで眼科を受診して発見されました。私の父親とは生別で知らなかったのですが、父親が色弱だったとのことです。

その遺伝子を私が受け継いでいるようですね。娘は軽症ということですが、進路について悩んでいます。大学は好きなところには行けないのでしょうか。色覚を改善させる方法はないのでしょうか。日常生活で注意することがあれば教えてください。(40歳、女性)

色の見え方や感じ方には個人差があり、色覚の検査で大多数の人とは異なった結果を示す人を、医学的に「色覚異常」と診断しています。つまり、「色覚異常」は色の見え方の個人差を表す医学的名称と言えます。先天性の色覚異常(ほとんどが先天赤緑色覚異常)は日本人では、男性の5%、女性の0.2%にいるとされ、稀な状態ではありません。

女性の場合には保因者(先天赤緑色覚異常の遺伝子を持っている人)の頻度は10人に一人とされています。普通自動車の運転免許の取得は可能ですし、どの大学にも原則的に進学可能です。職業を考えるにあたっては、娘さんの希望を最優先にすればよいと思いますが、飛行機のパイロットや自衛官、警察官などは制限を受ける場合があります。また、難しい配色を見分ける必要があるものは、現実には苦労することも予想されます。制限はなくなりつつありますが、仕事の内容については少し考えてみることもよいと思います。

先天色覚異常に対して科学的根拠がある治療法は現在のところありません。時に治ったという話を聞くかもしれませんが、練習によって検査表が読めるようになったり、精神的に改善されたりしたというようなことであり、医学的に先天色覚異常が治ることはありません。ただし、悪化することもありません。日常生活では、見分けにくい環境を作らないようにしてあげるとよいです。似たような配色のものは肌触りや形を変えたものにするとよいでしょう。

色以外の情報つまり手触りや模様などで見分けやすくするという方法です。照明が暗いとわかりにくいですから薄暗い場所は明るくしてあげることも大切です。現在、学校や社会では色のバリアフリーを目指して環境改善が行われています。色覚異常について正しく理解して偏見をなくし、色覚異常者が不利益を被ることのない社会をめざすことが、これからも大切です。