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症例詳細

No.31  眼底出血の原因

72歳の母のことでお尋ねします。3か月ほど前に右目が見えにくくなって、眼科を受診すると眼底出血(がんていしゅっけつ)と言われました。どうやら血管が詰まって出血したと いうことでした。

いろいろと検査されて、現在も通院していますが、一向に良くなりません。治療は飲み薬と白内障の目薬だけです。持病もありませんし、血圧もそれほど高くありません でした。何が原因だったのでしょうか。このままでよくなるのでしょうか。教えて下さい。(37歳女性)

眼底出血とは、文字通り眼の底に出血したことを言います。代表的には、糖尿病や高血圧症、貧血、妊娠、など全身の病気から起こるものや、静脈が閉塞して出血する網膜静脈閉塞症、 網膜細動脈瘤という血管のコブが破裂して出血するもの、網膜裂孔に伴うもの、黄斑変性によるもの、外傷によるものなどがあります。この中でも、頻度の高いものが網膜静脈閉塞症 (もうまくじょうみゃくへいそくしょう)で、質問者の病気はこれだろうと推測します。

網膜静脈閉塞症は、網膜中心静脈というおおもとの静脈が閉塞するものと一部分のみが閉塞する ものに分かれます。いずれにしろ、静脈内の血液の流れが非常に悪くなり、染み出るように出血するものです。動脈硬化が主要原因と考えられていて、高血圧、糖尿病、高脂血症などの 全身疾患を伴っていることが多いとされます。出血が比較的早期に消退するものとそうでないものがあります。黄斑という網膜の中心部分にむくみが生じると、著しく視力が低下したりゆがみが出たりします。

造影剤を入れて眼底写真を撮る蛍光眼底造影検査を行って治療方針を決定します。止血剤などの内服薬で様子をみていきますが、視力が改善しない場合もあります。 黄斑部のむくみが続く場合には、ステロイドや抗VEGF抗体を注射したり硝子体手術をしたりしますが、危険もあります。数年経過したのちに、大出血をきたしたり網膜剥離の原因になったりすることがあるため、

その予防としてレーザー治療をすることがあります。網膜静脈閉塞症は比較的予後が良い病気ですが、黄斑浮腫に対してはすぐに硝子体内注射をすることが多くなっています。まずは眼底出血の原因疾患をしっかり診断することが大切です。。