症例詳細
No.10 糖尿病眼合併症(糖尿病で目が心配です)
骨折で入院した際に、糖尿病と言われてしまいました。今は、内科に通院しており、目のことは言われていませんが、知り合いの人に糖尿病で失明した方がいて眼科に行くように 勧められました。
現在は目の症状は全くありませんが、眼科を受診した方がよいのでしょうか?(38歳男性)
糖尿病患者さんは全国で1000万人以上いるのではないかと推測されています。 糖尿病からくる目の病気は、糖尿病網膜症、白内障、 眼筋麻痺、角膜障害、虹彩・毛様体炎、屈折異常、調節障害、緑内障、虚血性視神経症などがありますが、このうち最も注意が必要なのが糖尿病網膜症です。
網膜症は、 眼球の奥底(眼底)すなわちカメラでいえばフィルムに相当するところに、小さい血管のこぶができたり点状出血したりすることから始まります。痛くもかゆくもなく、 視力も全く悪くならないまま、出血は次第に増加していき、増殖性病変に移行します。さらに進行して硝子体出血や網膜剝離になります。このころになると見えにくさを 感じるようになります。
増殖性変化を示す前からレーザー光線の治療をすると進行が抑えられますが、この時期を逸するとレーザー治療はできなくなり手術しか手がありません。 ただし、手術しても視力が元のように戻らない場合もよくあります。このように網膜症は始まっても自覚症状がでるのはかなり病気が進行してからになるため、長い間気づかれません。 失明寸前になって初めて気づくと言っても過言ではありません。糖尿病が中途失明者の原因の上位となってしまうのはこのためです。
したがって、糖尿病がある方は、 自覚症状が全くなくても定期的な眼科受診が必要です。まずは、眼科を受診して網膜症やその他の眼合併症がないかどうか、またどのくらいの間隔で通院が必要か、 詳しく診断してもらってください。
2022年07月