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症例詳細

No.164  成熟白内障・過熟白内障

 私の80歳になる母親のことです。かなり視力が低下したとのことで、近くの眼科医院を受診しました。眼科は初めてだったということです。白内障がひどすぎて、そのままでは緑内障発作になってしまうという理由で、受診して10日間もたたないくらいで右眼を手術してしまいました。

 左眼は慌てなくてもよいという理由で、1か月後に手術する予定になっています。白内障の中に、緊急性のある状態もあるのでしょうか。私の知っている限りでは、白内障手術は見えにくくなってからゆっくり計画すればよいものと思っていました。(45歳娘)

 はい、慌てなくてはならない白内障というものはあります。脱臼や亜脱臼を起こしている場合と、過熟白内障の場合です。高齢者にみられる白内障は、通常はゆっくり進んでいきます。よくある事例としては見えにくいことを自覚して眼科を受診した結果、加齢性白内障と診断され、数か月から数年通院してから手術になることが多い病気です。

 しかし、ご質問者のお母様のように、かなり見えなくなってから初めて眼科を受診したような場合には、白内障が相当進行してしまっていることがあります。水晶体の混濁の具合で白内障のステージをわけると、初発白内障、未熟白内障、成熟白内障、過熟白内障、の四段階があります。白内障がかなり進行して水晶体全体が濁った状態が、成熟白内障となります。

この状態がさらに進行すると、水晶体が膨隆し(ふくらみ)、房水という目の中の水が排出される部分を狭めて、緑内障発作を起こしやすくなります。また、過熟白内障では、時に水晶体を包んでいる皮が裂けて急性緑内障発作を起こすことがあります。これを水晶体融解緑内障と言います。

 水晶体融解緑内障では、流れ出した皮質が房水の出口をせき止めてしまうことで緑内障の急性発作が起こります。この発作では、緊急に手術しないと失明してしまう危険があります。ご質問の患者さんの場合には、過塾白内障であった可能性があります。そのために、比較的急いで手術することになったと推測します。