症例詳細
No.126 水疱性角膜症
68歳になる私の母のことです。次第に見えにくくなって来て、涙が多いと訴えて、近くの眼科を受診しました。すると水疱性角膜症と言われ、角膜移植を勧められました。この病気はどういう病気で何が原因だったのでしょうか。
10年ほど前に白内障の手術を受けたそうです。母を引き取ったのが3年前ですので、手術当時のことは詳しくわかりません。角膜移植手術をしないといけないのでしょうか?(42歳、娘)
角膜には、もっとも内側に角膜内皮細胞という細胞があります。この細胞は角膜を透明に保つためのとても大切な細胞です(このQ&AのNo.94をご参照ください)。水疱性角膜症という病気は、角膜内皮細胞の機能が著しく低下してしまい、角膜が水膨れを起こして濁ってしまう病気です。
視力が下がる以外に、異物感や流涙を訴えます。角膜の上皮が剥がれ易くなり、剥がれると激痛を感じます。原因は角膜内皮細胞の数が減ってしまったことによります。減ってしまった理由としては、日本ではそれまでに受けた眼の手術が原因の第1位となっています。以前の手術もしくは手術しなければならなかった状況によって角膜内皮細胞がかなり傷んでしまったと考えられます。
その直後には、まだギリギリのところで限界を超えずに保っていたものが、その後継時的に(年齢や現在の眼の状態により)さらに細胞数が減少していき、限界を超えて少なくなってしまったために水膨れを起こしてきたと考えられます。残念ながらこの細胞は年齢が高くなるほどに数が減っていくだけの細胞で、再生しないと考えられています。治療に関しては、水膨れや眼痛を減らすために目薬をつけたり、軟膏を入れたりしますが、視力の回復は難しく次第に見えなくなっていきます。
今のところ角膜移植手術以外に視力を回復する手立てはありません。見えにくいことと時々起こる痛みを我慢すれば、様子を見ていても構いませんが、年齢的には移植治療をお考えになられてはどうでしょうか。角膜移植も以前に比べれば、成功率も高くなっています。反対の眼の状況も考慮して、担当の先生とよく相談してお決めになるのが良いと思います。
2017年11月