症例詳細
No.60 再発性角膜びらん
先日、朝方右眼に激痛がして、眼科を受診すると「再発性角膜びらん」と言われました。半年前ごろに、植木いじりをしていた時に右眼のくろめを傷めたことがあったのですが、主治医の 眼医者さんは、これが原因だということでした。
実は、今回が3度目なのです。こすったりぶつけたりなど全く何もしていなかったのに、急にくろめがえぐれてしまうものなのでしょうか。 その日は眼帯をして帰り、今は目薬をつけています。当日はものすごく痛くてたまらなかったです。何か予防法はないのでしょうか。(40歳、男性)
角膜の傷は一見きれいに治っていても、角膜表面の上皮とその下の組織との接着が十分に回復していないことがあります。そのため、以前に傷ついた場所の上皮がはがれやすい状態が残ります。特に睡眠中は涙の分泌やまばたきが減って眼の表面が乾燥するため、まぶたと角膜表面がくっつき気味になります。朝、眼を開けた瞬間に接着の弱い角膜上皮がまぶたに引っ張られてはがれ、突然強い痛みを起こすことがあります。したがって、「何もしていないのに突然くろめがえぐれた」というより、以前の傷が完全には接着していなかったところが、起床時にはがれたと考えると分かりやすいでしょう。夜間から早朝、特に眼を開けた瞬間に強い痛みが起こるのは、この病気の典型的な特徴です。
実際に角膜上皮がはがれてしまった急性期には、角膜を保護する点眼薬や眼軟膏、感染予防のための抗菌点眼薬などを使用します。痛みが強い場合には鎮痛薬を使用し、上皮欠損が大きい場合や繰り返す場合には、治療用のソフトコンタクトレンズを一定期間装用して角膜を保護することもあります。再発を防ぐためには、傷が治った後の治療が大切です。就寝前に眼軟膏などを使用して、睡眠中に角膜表面が乾燥するのを防ぎます。症状がなくなってもすぐに中止せず、数カ月間、場合によっては半年以上続けることがあります。起床時に急に眼を大きく開けず、違和感があるときにはゆっくりまぶたを開けることも再発を避けるための工夫になります。
それでも何度も再発する場合には、外科的な治療を検討することがあります。病変が瞳孔から離れた場所であれば、細い針などで角膜表面に小さな刺激を加えて上皮を接着しやすくする方法があります。また、角膜上皮をいったん除去し、その下の表面をダイヤモンドバーで滑らかにする治療や、エキシマレーザーを用いて角膜表面をごく薄く切除するPTK(治療的角膜切除術)なども行われます。これらは角膜ジストロフィーなどに限った治療ではなく、外傷が原因の場合でも、点眼や眼軟膏などの治療を続けても再発を繰り返す場合には選択肢になります。
再発性角膜びらんは、いったん痛みがなくなっても「完全に治った」とは限りません。今回のように同じ眼で3回繰り返している場合には、傷が治った後もしばらく再発予防の治療を続けることが大切です。また、何度も繰り返す場合には、角膜ジストロフィーなど別の原因が隠れていないかを調べたうえで、必要に応じて治療用コンタクトレンズや外科的治療を検討します。
2026年09月