症例詳細
No.46 多焦点眼内レンズ
私の母親が白内障手術を受ける予定です。まだ63歳で活動的なのですが、見えにくいと言って一人で決めてきてしまいました。なんでも、多焦点眼内レンズというものを入れるそうです。 医療機関から頂いた説明書によれば、手術後はメガネを使わずに、遠くも近くも見えるようになるのだそうです。
ただ、夜は運転しない方が良いと書いてありますし、不快なものが見える場合もあるようです。40万円弱と高額で保険がきかないようなのですが、以前からある眼内レンズと比べてどうなのでしょうか。手術に心配はないのでしょうか。また、見えにくいということはないのでしょうか?(35歳男性)
多焦点眼内レンズは、一昔前に一時使用されていたのですが、結果があまり良くなかったために、ほとんど使用されなくなっていました。近年、新しいタイプの 眼内レンズが出現し、症例が増加してきています。多焦点レンズは、手術後にメガネをかけなくても遠方と近方との二か所もしくは三か所・五ケ所など、多焦点にピントが合うように設計された眼内レンズです。これに対して、今までのレンズを単焦点レンズと呼び、これを入れた場合には遠くか近くかのどちらかが良く見えるのが普通です(手術前に決めます)。
この多焦点眼内レンズを用いる場合にも、白内障の手術方法自体には、基本的に変わることはありません。ただ、不正な乱視がある場合には適応にならなかったり、単焦点レンズを用いる場合には問題にならないような手術中のわずかなトラブルでも、多焦点レンズを挿入できなくなってしまう場合があったります。多焦点眼内レンズを入れられた方は、メガネをかけなくても遠くや近くが見えるようになるわけですが、これには大脳の機能が関係するため、よく見えるようになるまでに時間がかかることがあります。
また、夜間には電灯などの灯りがやや誇張さ れて見えます。 しばらくは光の輪がかかって見えたり、ギラギラが気になったりすることがあります。このために、夜間の運転を職業とするタクシーのドライバーさんにはあまりお勧めしていませんでした。 多焦点眼内レンズには遠くも近くも見えるための工夫がされているために、単焦点レンズや病気の無い眼で正しくピントがあった距離の像と比較すると、わずかに焦度が落ちるとも言われます。
これらの理由ため、右眼と左眼を交互に隠して見え方を比較したり、電灯などを見てどんな感じに見えるのかなどを頻繁にチェックするようなやや神経質な方は、不満が出やすい可能性がありお勧めできません。一方、多焦点レンズにも種類が増えてきて、左右眼で仕組みが異なる多焦点レンズを入れることで、不快な光視現象を少なくできる方法も出てきました。料金については、選定療養という別枠の保険に組まれています。海外製の多焦点眼内レンズを入れる場合には自費診療となり、片眼で15万円~40万円とレンズの種類や施設によりばらつきがあります。
2025年07月