症例詳細
No.08 近視と老視(メガネをかけると近くが見えにくくなります)
もともと近眼だったので、遠くはメガネをかけないと見えにくかったのですが、最近はメガネをかけていると近くが見えにくくなりました。
遠くは、そのメガネでよく見えますし、 メガネをはずせば近くもよく見えるのですが、メガネを作り直した方がよいでしょうか?(47歳男性)
老視(老眼)を感じ始めたようです。近視(いわゆるきんがん)とは、近くはよく見えますが、遠くがよく見えない屈折状態のことです。他に疾患のない近視の場合は、遠用眼鏡 (遠くがよく見えるメガネ)をかければ問題なく遠方を見ることができます。
一方、老視とは、調節力の減退です。これは、20歳代から始まります。正視である(近視も遠視も 乱視もない)高校生でいえば、遠方がよく見えて、近距離も目の前8㎝のところまでピントを合わせることができます。この遠くから近くまでピントを合わせる力を調節力と呼びます。 この調節力は20歳代から徐々に落ち始めて、40歳代後半になると近くでピントの合う距離が読書できる距離(33㎝)を超えてしまうのでこれを、老視(老眼)と呼んでいます。
近視の方では、メガネ(遠用眼鏡)をかけた状態で、正視の方と同様に考えることができます。すなわち遠用眼鏡をかけた状態では、年齢とともに近くが見えなくなっていきます。 この質問者の方のような近視の方は、メガネをかければ遠くがよく見える一方で、45歳を過ぎるとメガネをはずさないと近くがよく見えません。これは、老化現象であり、 病気ととらえなくても良いと思います。ただ、調節力の減退にも個人差はあります。また、強すぎる遠用眼鏡を使用していると、遠方は何不自由なく感じていても、近くが 病的に見えにくく感じたり疲れやすくなったりしますので、遠用眼鏡が正しい度数かどうかや、単に屈折状態や調節力の問題だけであって、ほかに病気がないかどうかも 眼科を受診して調べてもらってください。
さて、この方の対処法についてですが、もともと近視の方は、メガネをはずせば近くがよく見える状態ですから、ある程度は近視が 老視を相殺してくれると考えることができます。眼科を受診して、別の病気がないとなった上でのことですが、しばらくはこのまま遠用眼鏡をかけて、近くが見にくい時にははずして 裸眼でやっていただく、もしくは、遠くを少し見えにくくしても許される状況であればメガネの度を少し弱くすれば、かけたままでも近くが見やすくなります。
2007年06月