症例詳細
No.05 生まれつきの涙目(出生後から涙が止まりません)
生後3か月の乳児です。生後すぐからの涙目で、産婦人科から眼科を紹介され、今も通院しています。生まれながらに涙道がつまっているとのこと、いずれ針を通すと 言われていますが、まだやってもらえません。
このまま通院していてもよろしいでしょうか?早く通していただいた方がよいのではないでしょうか?(28歳女性)
このお子さんは先天鼻涙管閉塞症のようです。涙は、まぶたの上の方で作られ、まばたきにより目の表面全体を潤します。目の表面に広がった涙は、 目元の瞼にある上下の小さい穴(涙点といいます)から、細い管を通り鼻の奥に運ばれていきます。
涙点→涙小管→涙嚢→鼻涙管→下鼻道という順序です。 涙嚢部以降の涙道を鼻涙管と呼びます。普通は胎生期に開くはずの鼻涙管の末端が、閉鎖したまま生まれてしまったものです。生まれてすぐからの涙目の原因にはこの他に、 内反症といってまぶたが内側に反ってしまっているためにおこるものや、まれですが涙点閉鎖などもありますので、よく鑑別していただいてください。
先天鼻涙管閉塞症は、 5人から10人ぐらいに一人ほどいる病気で、外来ではよく遭遇します。教科書的には、12か月ごろまでに自然に開通することが多いとされており、私自身も様子を見ているうちに、 自然治癒した症例を複数経験しています。ですから、この主治医の先生が言われていますように、6カ月くらいまでめぐすりや涙嚢部のマッサージなどで様子を見られてはどうでしょうか。
6か月を過ぎても全く変わらず流涙を認めるときや、涙嚢炎と言って涙道に細菌感染した場合などは、早急に先天鼻涙管閉塞開放術(涙道ブジーなど)を行うことがよいと思います。 もちろん、眼科医の中でも生後3か月ほどで解放術を施行される先生がいらっしゃるのも事実ですが、ガイドラインでは6~9カ月頃に施行することを勧めています。今の主治医の先生にそのお子さんについて早く処置した方がよいかどうか十分 説明を聞いたうえでお決めになられたらよいと思います。
2022年04月